有機的な実験場をつくる

NTT コミュニケーションズ

事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」

インフラの提供者から、社会課題を解決する存在へ。通信事業者として人や企業をつなぎ、ビジネスや人々の生活を支えるNTT Comは、巨大インフラ企業ならではの課題解決を模索しています。その一環として手掛けた事業創出プログラムとワークプレイスは、ローンチと同時に数ヶ月先まで予約が埋まるほどの盛況ぶり。共創のモメンタムとなっています。
つないだ先の未来を創る

2021年から2022年春にかけ、NTT Comが新たな事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」、最先端技術を備えたワークプレイス「OPEN HUB Park」を開設しました。

KESIKIは、コンセプト策定から、チーム組成、プログラム設計、組織設計、VIのディレクション、メディア・コミュニティの構想設計、空間コンセプト設計など、総合的にディレクションを行いました。また、建築設計事務所 noizやクリエイティブ・スタジオwhateverなど強力なチーム編成でNTT Comと共にOPEN HUBを実現しました。

約1年に渡る準備期間は、NTT Comの経営課題を改めて一緒に見つめなおすことからスタートしました。

予測不能な変化の時代の中で複雑化する社会的課題に対応するためには、つなぐだけではなく、「つないだ先にどのような未来を描き、創るのか」を追求していくことが重要。それには、一社での取り組みでは限界があります。

これまで、企業や地域社会、生活者や各産業など、さまざまな人や企業をつないできたNTT Com。2020年には、事業ビジョン「Re-connect X™」を掲げ、通信によってつなげてきた、あらゆるものの価値を再定義し、共創によって安心安全かつ柔軟に「つなぎなおす」ことで、サステナブルな未来の実現に取り組んでいます。

これからの時代における場の在り方

なぜ「場」なのか。自分たちの強みや時代性を活かすには、どうすればよいのか。これが、最初に向き合った問いです。それというのも、すでに多くの日本企業が、オープンイノベーションの拠点やコラボレーションワークスペースを運営しています。現状は飽和状態。そして、そのすべてがうまく機能しているわけではありません。空間だけつくっても、どのような人や企業が集まり、何が行われるかのコンテンツがデザインされないままでは、本来の役割を果たすことはできません。また、リモートワークが定常化した今、改めてリアルな「場」をつくる意義や、デジタルとの融合も考えなければなりません。

真に豊かな社会を創るための、本質的な共創を生み出すには、どんな場がいいだろう?必要なのは、生きた対話があり、偶発的な出会いに溢れた、有機的な場ではないだろうか?リアルとデジタルを自由に行き来する、これからの時代の「場」のあり方とは?

そんな問いから議論を重ねる中で、生き生きとした共創の場に必要な要素が浮かび上がってきました。

軸となったキーワードは「OPEN」と「PLAY」。企業や産業の垣根、リアルとデジタルの境を越えて、遊ぶように自由に試行を繰り返す「実験場」というコンセプトが言語化されました。

共創のハブとなる「カタリスト」

まず、何よりも大切なのは「人」です。人や企業、コミュニティーを共通の課題でつなぎ合わせ、新しい解決方法を共に考え、実験と社会実装を推進していくハブとなる人。どんなにいい場所や技術があっても、そこにハブとなる人がいなければ共創は生まれません。

OPEN HUBでは、そのような人々を、NTT Comの社内外から選定し「カタリスト」と名付けました。新規事業に取り組む人や、専門知識を持った人など、社内の多種多様な部署からユニークな社員を抜擢しました。また社外の様々な分野で活躍するエキスパートたちもカタリストに就任。カタリストの選出だけでなく、彼らが中心となりコラボレーションを生むための仕組みも考案しました。共創を支える組織の形、携わる人々の行動規範、育成のための研修まで設計していきました。

次に設計したのは、カタリストが、実際に企業やパートナーと共に事業コンセプトを生み出すにあたって、道筋となる「プログラム」です。社会課題を解決する事業を生み出すためには、これまでと、仕事のしかたを変える必要があります。正確性の追求から、より探求や実験を重視するプロセスへ。どんな人、企業であっても、良い問いを立て、その答えを探究することができるよう、プログラムの「型」を準備。ワークショップやアイディエーションの方法など、大きな流れから細かな行動・プロセスを言語化しました。

実際にプロジェクトチーム内で、プログラムに則ったビーコンプロジェクトを実施。新規事業のコンセプトを立案し、プログラムの中でやりづらい部分や不確定な部分など、改善を重ねました。今後、プログラムの運転を繰り返していく中で、より良くアップデートしていくための土台作りです。

リアルとデジタルを行き来できる場

空間のデザインは、日本、台湾、ワルシャワを拠点に世界で活躍する建築設計事務所 noizと共にコンセプトを議論しました。リアルな場でなければ生まれない、偶発的な出会いやインスピレーション、五感体験などがカギに。そして、大手町という都心にありながらも、人間らしくのびのびと実験ができるような、有機的なデザインを目指しました。

同時に、リアルな空間と繋がった、バーチャルエクスペリエンスも設計します。パートナーは、デジタルと体験実装が強みのクリエイティブスタジオWhatever。通信テクノロジーのリーディングカンパニーならではの最新技術と、ひとの体験に寄り添うクリエイティブが交差します。リモートでも、会場やイベントを疑似体験できる「ロボットビジターズ」や、NTT Comの持つビッグデータをフィジカルに体験できる「ビジュアライザー」などを導入しました。

また、OPEN HUBで行われているイベントや共創事業などが集積するウェブサイトのコンセプトも企画。。数ヶ月ごとに特集テーマを設けたウェブメディア、コミュニティー、イベントの配信などのコンテンツを盛り込み、オンラインでもOPEN HUBを体験できる場になりました。

 

CI/VIは、百貨店の包装紙などデザインを手掛けてきたグラフィックデザイナーの岡本健さん率いる岡本健デザイン事務所に依頼し、様々な人や企業が柔軟に混ざりあい、未来をひらいていく様子を、ビジュアルに落とし込んでいただきました。

社会実装へ向けた変革の兆し

こうして、たくさんの人が関わりながら、「人」と「技」と「場」が三位一体となり、社会課題を起点に、事業共創していくプロセスが作り上げられました。2021年秋にはプログラムがローンチ、2022年春にはワークプレイスがオープンしました。

結果として、OPEN HUB Parkは100社を超える多くの大手企業の来訪申し込みがあり、数ヶ月先まで予約で埋まっているような盛況ぶり。日々、オンラインとリアル同時開催のイベントや、企業とのワークショップなど、様々な活動が行われ、新たな事業が生まれています。

https://openhub.ntt.com/
  • 総合ディレクション : KESIKI
  • VI・サインデザイン : 岡本健デザイン事務所
  • 空間設計 : noiz architects
  • デジタルエクスペリエンス : Whatever Inc.
  • プロダクションマネジメント : xpd Inc.

学び

NTT Comのトップマネジメントとの議論から、現場での建築チームとエンジニアでのすり合わせまで、総勢数百名を巻き込んでいったプロジェクト。KESIKIとしてもこれまでに一番大きなプロジェクトで、コンセプトドリブンで多様な人を巻き込んでいくことのダイナミックさを体感しました。
その反面、巨大な組織の中で強い推進力を生み出す難しさもありましたが、共創と実験のプロセスを通して、社内外に徐々にモメンタムが生まれていきました。そうしてコミュニティーの中に変革の種を植えられたことは、大きな成果だったと考えています。

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