- Question
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どうすれば、デザイン教育を通して、高い美意識とカタチにする力を備えたビジネスパーソンを育成することができるだろうか。
- Outcome
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幅広い所属の150名を超える受講生(2022.4時点)に対して、美しいビジネスを創出するためのスキルとマインドセットをインストール。修了生は、新たな事業・部門を立ち上げる、受講生同士で事業を始める、自らのキャリアを見直す、などと具体的なアクションが生まれている。
様々な企業や行政の現状と向き合うなかで感じられるのは、日本は、他国と比較して「デザイン」の考え方が、まだ一般に浸透していないということ。デザインの考え方に関する教育の必要性を感じていました。
そんな中、HAKUHODO DESIGNの代表で、政府の「デザイン経営」宣言策定にも関わった永井一史さんより、多摩美術大学でビジネスパーソン向けのデザイン講座創設の相談を受けます。デザインの方法論でビジネスを推進する、教育プログラムづくりに参画することになりました。
プログラムディレクターとして石川、プログラムチューターとして大貫が参画し、永井さん、デザインファームBIOTOPEの佐宗邦威さんらと共にプログラム内容を開発しました。
最初に議論したのは教育方針。「ビジネスに、デザインの持つ創造性と美意識を。」というミッションの元、生まれたのが、以下6つの方針です。
Embrace ambiguity <もやもやを抱き締める>
User Insight <深い共感>
Iteration <つくりながら考える>
Culture Design <会社のカルチャーをデザインする>
Mission Vision Beacon <未来と想いの交差点から見える一歩>
Beautiful Business <美しいビジネスを追求する>
次に、プログラムの骨子となる要素を洗い出します。パーパスの設定から、問いの立て方、UI/UXまで、美しいビジネスを追求する上でのデザインは多岐にわたります。それらを、一貫したループでつなぐと、組織・カルチャーと、イノベーションの両軸が繋がり、サステナブルな形で社会実装できるのではないか。その仮設から、プログラムを設計しました。
次にプログラムの設計。これまでKESIKIがクライアントに対して行ってきたプロジェクトのプロセスや、デザインアプローチの知見を言語化し、「探求」「創出」「実験」などのフェーズに分け、学びと実践をミックスした3カ月・全11日(隔週土曜で開催)のプログラムに落とし込みました。デザイナーや、企業経営者などのゲスト講師による講義と、実際にプロジェクト立案をする中で学ぶ実践を組み合わせた、ハイブリットプログラムです。
プログラムの中で意識したのは、「教えすぎない」ということ。社会性と文化性、経済性の3つを踏まえた「美しいビジネス」を生み出すという、正解のない難題に対して、講師と生徒が一体となってつくり上げる形を設計し、新しい教育の取り組みを継続的に改善していく仕組みをデザインしました。
プログラムは受講生からのフィードバックを踏まえてアップデート。デザイナーから、これまでデザインとは全く関係のない仕事をしてきた人まで、様々なバックグラウンドの受講生がいる難しさもありましたが、それぞれが探究していくことのできる環境を整えています。
また、受講クラスには、多摩美術大学のデザイン学生も、サポーターとして参加しています。学生にとってもビジネスパーソンや社会人の考え方に触れることによって、刺激や気づきがあるようです。
受講生は商社やメーカー、メディアをはじめ、企業のインハウスデザイナーや外資系コンサルタント、公務員など多種多様。約30名が、グループワークや個人ワークを通して、学びを深めています。
多い感想は「これまで上司や会社が答えを持っていた。自ら問いを立てて、正解のない答えを探求するということ自体、初めての体験だった」「分からなさや、曖昧さを抱きしめながら、ぐるぐると悩み続ける大切さを知った」というような、デザインの本質を突くもの。物事に対する考え方を根底から変えられたという人も多いようです。
2022年4月現在、すでに150名の卒業生が輩出されました。経営層を動かしながら新しい事業モデルを考え、会社のカルチャー変革を起こそうとしているIT企業の経営者クラスの方。デザイン組織に異動し、ビジネスとデザインをかけあわせたチャレンジを始めた大手メーカーの経営企画部の方など、それぞれのフィールドで学びを生かして活躍されています。受講していた経済産業省の官僚3名が始めた活動は、後々の「JAPAN+D」プロジェクトに発展しました。
学び
これまで積み重ねてきた、デザイン思考やカルチャーデザインのノウハウを体系的にプログラムに落とし込み、受講生からのフィードバックを通じたイテレーションを行うことで、KESIKI メソッドの結晶化に繋がりました。すでにインパクトを産んでいる受講生も多く、こうした草の根的なアプローチの重要性を実感しています。TCLが掲げる「美しいビジネスの創出」は、私たちが目指す「やさしさがめぐる経済」とも関連が深く、社会性、経済性のみならず文化性を持ったビジネスを生み出すことの価値を再認識することができました。