- Question
- どうしたら、40年続く家具ブランドを、社員や顧客にこれからも愛され続けるように、本質を守りながら進化させられるだろうか?
1983年の創業以来40年、無垢の木を使った家具のブランドとして多くの顧客に愛されてきた「WOOD YOU LIKE COMPANY(ウッドユウライクカンパニー)」。創業者の引退にあたり、跡継ぎがいないという問題に直面。また、若年層を含めた新しい顧客層の取り込みや、クオリティや手仕事へのこだわりを顧客価値として発信しきれていないという課題も抱えていました。
40年間愛されてきた本質を守りながら、時代にあわせて形を進化させていく。そんなブランドづくりの方向性を創業者と確認し、2021年にKESIKIがバトンを受け取りました。「Being(組織づくり)」「Doing(プロダクト・サービスづくり)」の両軸で、日本では初となるデザインアプローチ型の事業継承を進めています。
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まず初めに取り組んだのは、「Being(組織づくり)」。ブランドのアイデンティティを社員と共に深く議論し、言語化、ビジュアル化をしていきました。WOOD YOU LIKE COMPANYは創業以来、「愛される無垢の木の家具をつくる」という言葉を掲げてきました。これまで育んできた哲学と技術を継承しつつ、ものをつくることを超え、私たちの豊かな暮らしをつくる会社へと進化していく。そのような想いをこめ、「愛着がめぐる暮らしをつくる」という新たなパーパスを定めました。
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ロゴ、ビジュアルアイデンティティは、「再構築」をテーマに刷新。長年WOOD YOU LIKE COMNPANYのシンボルとして親しまれてきたWマークの再解釈です。縦、横、斜めに走るグリッド状の線は、建築の構造材である「梁」がモチーフ。 今まで大切にしてきた芯を残しながら、より良いブランド、そして会社になるための変化とチャレンジをしていきたいという姿勢を表しています。緊張感のある繊細な線で構成されるアイコンと、タイムレスでありながらもモダンなフォントの組み合わせは、新しさと普遍性の融合。デジタルを含む新しい領域への拡張性を意識しています。
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また、「愛着がめぐる暮らし」をテーマに、家具とその背景にあるストーリーやサービスがより分かりやすく伝わる場として、ウェブサイトもリニューアル。遊び心を交えながらブランドの世界観を表現しています。
次に取り組んでいるのは、「Doing(プロダクト・サービスづくり)」。2023年には、WYLCのロングセラーを現代的に再解釈した新たなコレクション「MODERN」をリリース。これまでのデザインの本質を深堀り、3つのチェア「MOCHI」「NAWA」「USU」を始め、テーブルなどを展開しています。
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「かたちの先のやさしさ」をコンセプトに、愛くるしいフォルム、無垢の木の心地よさ、手仕事だからこそ感じられる温かさを持ち合わせ、使い続ける中で愛着が湧いてくるようなコレクションを目指しました。制作・デザインのプロセスでは、昭島ファクトリーのCDO佐々木淳史さんを中心とした職人と、KESIKI、そして大城健作さんなどのプロダクトデザイナーがチームとなり、それぞれの視点を重ね合わせ、議論とプロトタイピングを繰り返しながら共創するという形をとっています。
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新しいものをつくるだけでなく「長く使い続けられる」を叶えられるようなサービスの展開も始めました。
WYLCが以前から行っていたサービスのアップデートも含め、「プレミアムオーダー」「カスタマイズ」「リメイク」「メンテナンス」「ビンテージ」の5つのサービスをリリース。都内に自社ファクトリーとショップを両方持つ家具ブランドだからこそ、制作からメンテナンス、そして家具の引き取り、ビンテージの再販まで、職人とショップのコンシェルジュが連携しながら、顧客と家具との関係を支え続けます。
プレミアムオーダーとして、リノベーションの造作家具や、店舗什器としての家具などの事例も増えてきました。また、「旅する家具」と題して、自社家具の引き取り、メンテナンス、再販の企画でも、思った以上の反響があり、手応えを感じています。
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顧客一人ひとりの暮らしや人生に寄り添うようなサービスを叶えるため、表参道のショップもリニューアル。その場で職人による仕上げやメンテナンスができる工房があったり、細やかにオーダーに応えられるようなツールがあったり。広々とした空間でじっくりお客様と向き合う時間をつくっています。
「愛着がめぐる暮らしをつくる」というパーパスを、プロダクトやサービスとして形にし、お客さまとの関係をつくっていく。カルチャーデザインのすべてをやり抜くにはたくさんのハードルがあります。それでも少しずつ、ブランドも社員も、ともに未来に向かって変化をしてきています。WOOD YOU LIKE COMPANYとKESIKIの挑戦は、これからも続きます。
- CI / VI design : Arata Maruyama(&Form)
- Product design advise : KENSAKU OSHIRO
- Photography : Masaki Ogawa
- Art direction / Web design : Takanori Nishi(Multiples)