- Question
- どうすれば、強い共感を生み、顧客に愛されるサステナブルなブランドを生み出すことができるだろうか?
- Outcome
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ビジュアルアイデンティティ、ブランドサイト、EC、オウンドメディアなど顧客接点を総合的にディレクションすることで、「サステナビリティの自分ごと化」をいうコンセプトをぶらすことなく新ブランドのローンチを実現。
環境負荷を意識したプロダクトや企業の姿勢を、ユーザーに価値として認識してもらうにはどのようにすれば良いか。持続可能な社会やアパレルにおけるサーキュラー・エコノミーを実現するために、2021年にアパレル企業アダストリア社の子会社として設立したADOORLINK社の看板ブランドづくりとコミュニケーション戦略はそんな問からスタート。
決まっていたのは、すべての衣服をコットンなどの天然繊維、もしくは再生ポリエステルなどのリサイクル素材で作るということ。
環境負荷を軽減するという側面を重視したブランドをつくることはできますが、それと同時に叶えなければならないのは、アダストリアとしてこのブランドを同社の他ブランドと肩を並べる規模にまで成長させたいというオーダー。この両立はとても難しいものがあります。
問題は、ユーザーへの伝え方。ファッションメディアの編集長などのオピニオンリーダーや、ユーザーへ意見を聞く中でわかってきたのは「エコ」や「サステナビリティ」を理由に服を買う人は、それほど多くないということでした。
環境負荷を減らすことを追求する姿勢をきちんと伝えながらも、ユーザーがよりダイレクトに価値を感じられるような伝え方を模索する中で出てきたのが、生活の日常の延長にあるサステナビリティという考え方。自分が心地よくあるための選択が、結果的にサステナビリティに貢献できる、というスタンスです。
機能性とデザイン性に優れ、シーンを選ばずにストレスフリーで過ごせるプロダクトを、服を選ぶ純粋な楽しみや心地よさで選んで消費者に選んでもらうためのタグラインとして「新しいふつう、新しいかっこよさ」というコピーを採択。同時に、プロダクトとコミュニケーションの双方のデザインの指針をつくりました。
次に考えたのは、ビジュアル・アイデンティティである、ブランド名とロゴ。「新しいふつう」を提案するブランドだからこそ、ネーミングも新しい作り方に挑戦してみようということになりました。様々な人の生活に寄り添う、よりニュートラルな表現をしたい。思想をダイレクトに押し出しすぎず、より多くの人に自然に受け入れられるネーミングにしたい。そんな思いから、文字を一度、「意味」から切り離し、「記号」として捉えてみることに。
国内外でタイポグラフィックデザインやビジュアルコミュニケーションデザインを手がける丸山新さんのアートディレクションのもと、たくさんの議論の結果「O0u(オー・ゼロ・ユー)」に決定しました。異なる形の円のように見える3つの文字の組み合わせは、多様な美しさや、ライフスタイルに沿って変化するプロダクトのあり方、その延長上にある循環型の社会を表しています。 敢えて記号的にすることで、また、人種や性別、年齢、思想、ライフスタイルなどの境界を超えて、着る人の多様な個性に寄り添うという意味を込めました。
実店舗をもたないブランドとしてデビューしたO0uには、ユーザーとの接点やファンづくりの工夫が必要でした。ローンチ後には、ウェブマガジン『 ME& THEEARTH』を配信開始。自分たちの生活の延長にある環境問題や解決方法を、生活者と一緒に学んでいくというスタンスです。
ECサイトは「A面」として、心地よさを打ち出す。オウンドメディアは「B面」として、ブランドの思想を伝えています。 KESIKIはブランドサイトに引き続き、コンセプト企画、エディトリアルディレクションを担当しブランドが大事にする思想を伝えるメディアとして育てています。
- client : ADOORLINK(ADASTRIA)
- Strategic Partner : Roland Berger
- Art Direction : &Form
- Web Design : Semitransparent Design FRACTA
- Editorial Partner : exwrite
- Digital Marketing Partner : DeeTeller
学び
「サステナビリティ」は、ビジネスシーンではもう何に関してもついてくる言葉になりました。しかし、一般の生活者として、サステナビリティを自分ごとに捉えている人はまだ多くない。その難しさについて、正面から向き合ったプロジェクトでした。
徹底したポリシーやこだわりをストレートに伝えるのではなく、「楽しさ」「心地よさ」に根ざした柔らかいコミュニケーションに変換することが、鍵だと考えています。