60年以上前に設立され、今や多くの人が知っているデザインアワード「グッドデザイン賞」。その運営母体であるJDPは、社会におけるデザインの役割とともに変化を続けてきました。
気候変動や人権問題など大きな課題が差し迫っている今、デザインの果たす役割はさらに広がってきています。デザインの力を”日本のデザイン業界”に閉じず、あらゆる業界や領域の人・組織、また地方、そして世界へと広げていきたい。そんな思いから、JDPでは、グッドデザイン賞を軸としながら事業を多角化する動きが生まれていました。
しかし、いろいろなアイデアややりたいことが増えていく中で、JDPがやるべきことは何なのか、何から始めるべきなのか、判断の指針がなく進められないという壁に直面。そこでKESIKIと共に、デザインの役割を再定義し、その中でJDPが何をしていくのか、パーパスやアクションを考えるプロジェクトが発足しました。
JDPの全職員が参加し、デザインの役割ってなんだろう?デザインを振興するってどういうことだろう?自分たちらしさってなんだろう?といったテーマでワークショップを行い、言語化を進めていきました。
議論をする中で見えてきたデザインの役割は、「人とあらゆるものとの関係性をより良くすること」、「一人ひとりの創造性を引き出すこと」。そんなデザインの可能性をより多くの人に拡げていく。それこそがJDPの存在理由だという結論に至りました。
また、「デザインを拡げる」ということを具体的なアクションへと落とし込むために、事業指針を5つの動詞として言語化。すでにスタートしていた新しいプロジェクトや、一人ひとりの職員の日々の仕事にも、これらの動詞を当てはめ、これまでの振り返り、これからの行動を考えていく指針となりました。
さらにこれらを基軸として、2030年までにやること、これからすぐに動き始めるプロジェクトを3つに絞り込み、社会に宣言するところまで踏み込みました。
また、職員がこのアクションを実行するにあたって、行動指針(バリュー)も言語化しました。自分たちらしい良いところ、変えていきたいところ、口癖などを出し合い、最終的に5つの標語にまとめました。
これらの要素をJDPのメッセージとして発信すべく、プロジェクトで言語化したものをひとつの冊子(PDF資料)としてまとめました。KESIKIが編集・ディレクションを担当し、エディトリアル・グラフィックデザインは、デザイナーの木住野彰悟さん(6D)に依頼。デザインとJDPの未来を感じさせるような、すっきりとしたグラフィックに仕上がりました。
次は、定めたパーパスや宣言したアクションを実現していくために、様々な団体組織や企業などと連携を進め、具体的なプランを実行していくフェーズです。2023年10月に行われた「World Design Assembly Tokyo 2023 / WDO世界デザイン会議東京2023」でも、世界に向けてパーパスを宣言しました。
「人とあらゆるものの関係をよりよくする」。
そんなデザインの力を、より多くの人々へ拡げていく。
半年間かけて全職員でつくった羅針盤を胸に、これから世界に向けて、JDPのチャレンジが始まります。
- グラフィックデザイン : 木住野彰悟(6D)
学び
日本を代表するデザイン振興組織のパーパスを考えることは、改めて日本ならではのデザインの歴史や特性を捉え直し、日本のデザインが世界に向けてこれからどんな役割を担うことができるのかを考えることでもありました。グッドデザイン賞の潮流や議論などから導き出された「関係性を良くする」「創造性を引き出す」というデザインのキーワードは、KESIKIにとっても大きな気づきでした。