中小企業の
未来を考える

経済産業省 特許庁

特許庁「デザイン経営プロジェクト」の推進

「デザイン経営」という言葉は、世の中に広まりつつあります。しかし、ビジネスの現場、特に日本の企業の大部分を占める中小企業にとっては、まだ遠い存在。変革をリードする行政と、対象となる企業両方へのアプローチで、変革を後押しします。
Question
どうすれば特許庁が「デザイン経営」の旗振り役となることで中小企業へと広げると同時に、自らのカルチャーにも組み込むことができるだろうか?
Outcome
イベントや冊子を通じて中小企業に対して「デザイン経営」の入口を提示。また、庁内のミッション・ビジョン・バリューを見直すことで、提供価値を横断的に議論する機会を提供。
庁内、庁外の両方にアプローチ

特許や意匠、商標といった知的財産権の審査や、その活用を担う経済産業省・特許庁。2018年には『「デザイン経営」宣言』を掲げ、その導入を推進してきました。2020年度、KESIKIはそんな特許庁のパートナーとして、デザイン経営を浸透させるための事業を支援し、ふたつの方向から取り組みを発展させていきました。

ひとつは、特許庁自体がデザイン経営を体現するための、庁内のカルチャーデザイン。もうひとつは中小企業がデザイン経営を推進するための施策の立案です。

特許庁、経済産業省地方局など総勢50名を超えるメンバーで、3つのチームを組成。デザインリサーチ、シンセシスといったデザイン思考のエッセンスを共有しながら、プロジェクトを推進しました。

特許の本質を見直す

特許庁のカルチャーをデザインするうえで提案したのは、ミッションの見直しです。「早く正確に審査する」「産業振興に寄与する」というミッションを掲げていましたが、特許庁が提供できる価値の一部しか表現できていないのではないか、と考えたためです。

知的財産に関わることの本質とは何か。たくさんの関係者と議論を重ねました。結果、特許庁の役割は単に知財の取得をサポートするだけではないのではないか、という議論に行き着きます。単に取得することで終わらせず、その知財を活用しやすくすることで人や企業がクリエイティビティを発揮できる社会を作ること。それをミッションとして掲げ、企業や個人に寄り添いながら実行していくことを宣言することにしました。

ミッションを体現するための行動指針も策定。同時に、職員を対象としたデザイン思考のワークショップを実施するなど、彼らの働き方や仕事の進め方の変革にも取り組みます。

実践者の経験から学ぶ

他方で行ったのは「デザイン経営」に馴染みの薄い中小企業の経営者に、はじめの一歩を踏み出してもらうための施策の検討です。まずはリサーチとして、経済産業省地方局とも連携しながらデザイン経営の先進企業15社をピックアップ。インタビューや、「DESIGN-DRIVEN MANAGEMENT SEMINAR」と題したオンラインのトークセッションを実施しました。

約半年間、全6回におよぶトークセッションでは「デザイン経営」を実践する経営者と、特許庁のメンバー、KESIKIのメンバーで鼎談を展開。九州から北海道まで、様々な地域と業種の企業経営者に、リアルな失敗談や価値観、組織についてなど、多様なテーマでお話しいただきました。

イベントは毎回100〜200名ほどが参加。noteでのイベントレポート記事も、たくさんのシェアがされるなど、大きな反響がありました。参加者の抱える悩みも吸い上げながら、企業の課題を解決するきっかけをつくりました。

課題別の入口の提案

また、発信の一環としてデザイン経営の始め方のガイドをまとめることに。
インタビューやトークイベントから引き出されたエッセンスを要素分解し、一冊の冊子に編集しました。
意識したのは、経営者にとって身近な経営課題と、はじめの一歩に適した施策を紐付けたこと。デザイン経営に興味はあるが、どこから手を付けたら良いかわからない、という経営者に寄り添い、目の前の困りごとの解決から順番に広げていくための道標を提示しました。

この冊子は『みんなのデザイン経営』と題したハンドブックとして、特許庁のホームページやパンフレットとして紹介されています。

https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei/chusho.html https://note.com/kesikijp/n/ndae9e09fb1e2

学び

いくら立派なセオリーやメソッドがあっても、それが身近な課題の解決と接続していなければ取り入れる理由にならない。そのことを、経営者のリアルな声に耳を傾ける中で痛感しました。

さらに詳しいプロジェクトストーリーはこちら

Share